個人型確定拠出年金(iDeCo) 始めたら60歳までは受け取れないので注意
目次
とあるライフプラン事例から
先日、お客様からライフプランシュミレーション(キャッシュフロー表作成)を依頼されました。作成した結果、残念な事に預金額が世帯主様が59歳の時にマイナスになってしまうという問題がありました。(下図参照)
そこで預金だけでなく、全資産の内訳を分析すると、以下の様な結果になりました。(下図参照)
黄色は預貯金、水色は 個人型確定拠出年金(iDeCo) 、灰色は現預金不足時の全資産額合計の額です。
見て分かる通り、 個人型確定拠出年金(iDeCo) と預貯金の合計は世帯主様が58歳時点では600万円以上もあるのに、翌年にはマイナスになってしまいました。 個人型確定拠出年金(iDeCo) の額は結構な額になっているのですが。
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは?
では個人型確定拠出年金(iDeCo) とはどんな制度なのか、もう一度簡単におさらいをしてみましょう。
個人型確定拠出年金制度の事で、簡単に言うと個人で作る積立年金のことです。自分で決めた額を積み立てながら、その掛金を自分で運用することで、将来に向けた資産形成を進められる年金制度です。そして、その年金資産は60歳から受け取ることができます。
① 自分で設定した掛金額を拠出して積み立てる
② 自分で選んだ運用商品(定期預金、保険商品、投資信託)で掛金を運用
③ 年金受け取り額は運用商品や運用成績など状況により変わる
加入資格
基本的に20歳以上60歳未満の国民年金または厚生年金の被保険者です。ですから、個人事業主、会社員、専業主婦(夫)、公務員、学生、パート、アルバイトの方など、加入資格さえ満たしていれば、どなたでも利用することが出来ます。
拠出限度額
月額5,000円からはじめることができます。それ以上積み立てたい場合は1,000円単位で上乗せできますが、下表のとおり加入者のご職業等によって上限金額が定められています。
どこが問題だったのか?
さて、原因はどこにあるのでしょうか。原因は 個人型確定拠出年金(iDeCo) のかけ方に問題があるのです。 この時点で察しが良い方であれば気が付いたかと思います。
そう、 個人型確定拠出年金(iDeCo) は原則、60歳になるまで年金資産を引き出すことが出来ません。急に資金が必要になったとしても引き出す事ができないのです。上記事例の場合、58~59歳の時に多額の支出がある為、それ相応の現金が必要だったのですが、資産の大半が 個人型確定拠出年金(iDeCo) であり、60歳までは受け取る事ができなかった為、この様な結果になってしまったのです。
また、拠出金額も会社員の上限、月額2万3000円になっていた点も原因のひとつになっていました。つまり、老後の資金作りを意識するあまりに、過剰な 個人型確定拠出年金(iDeCo) の掛け方になっていたという事が原因でありました。
つみたてNISAの活用が有効
では、どの様に改善すれば良いのでしょうか。
ここからがファイナンシャル・プランナーの腕のみせどころです。・・・少々大げさでしたね、実は対策は非常に簡単なんです。問題は資産作りの方法を個人型確定拠出年金(iDeCo) だけに頼っていたからですので、対策案としては、他の資産作りの方法を併用する事で解決できます。そこで候補となるのが、つみたてNISAの活用です。
つみたてNISAの概要については下記コラムを参照してみて下さい。
対策(つみたてNISAの活用)の結果は?
今回の事例の対策は以下の通りです。
① 個人型確定拠出年金(iDeCo) 掛け金を月額1万円に変更
② つみたてNISAを月額1万3000円で57歳まで運用し、58歳の時に一括で現金化
結果は下図の通りとなりました。
黄色は預貯金、水色は 個人型確定拠出年金(iDeCo) 、紫色はつみたてNISAの額です。
59歳の時に預貯金がマイナスになる事はなく、しっかりと200万円程度を確保しています。また老後資金も対策前とほぼ同額を確保する事ができています。
最後に
さて、今回のコラムはいかがでしたでしょうか。明らかに老後資金作りを個人型確定拠出年金(iDeCo) に頼るばかりに、老後になる前に家計が破綻してしまった事例を紹介させていただきました。 老後資金作りの方法は個人型確定拠出年金(iDeCo) だけではありません。色々な方法を組合わせて、万が一の場合にも備える事が非常に重要です。 ファイナンシャル・プランナーはお客様のご希望をお聞きし、個々に最適と思われるプランを作成し、提案させていただきます。是非、経験豊かな ファイナンシャル・プランナー をご指名下さい。
誰でもFP相談室 村上