日本の教育費高騰 諸外国に比べて高い?国の施策は?

教育費
はじめに

今年の子どもの出生数が、国の統計開始以来初めて80万人を下回る可能性が指摘されています。2015年の出生数は100万人を超えていたので、わずか7年で20%以上減少してしまうことになります。少子化が進むと年金制度や医療保険制度など、現役世代が支える社会保障制度の根幹が揺らいでしまうので、対策は喫緊の課題です。日本で少子化対策の必要性が叫ばれてから久しいですが、国の施策が全く機能していなかった事を如実に示す数値かと思うと、残念で仕方がありません。
さて、私達ファイナンシャル・プランナーがお客様のライフプランを作成する主な目的は、人生の3大資金つまり「住宅取得」「教育費」「老後資金」です。現在の状況では残念ながら全ての資金を潤沢に確保できるお客様は少ないのが実態です。「教育費」は子供の数に比例してかかりますから、ライフプランの中でも特に重要なファクターです。そこで今回は日本の教育費と少子化についてフォーカスして考えてみたいと思います。

実際に必要となる教育費は幾ら?
計算

                    

実際にどの程度の教育費がかかっているのか、我々ファイナンシャル・プランナーがライフプランを作成する際に使っている一般的な数値を使ってシュミレーションしてみました。
(ちなみに教育費の算出の元となるデータは、「文部科学省 平成30年 子供の学習費調査」、「教育費負担の実態調査結果(日本政策金融公庫・2019年)」を参考にしています)

パターン1:高校までは全て公立(国立)の場合
 全て公立ですから、多分、最も最小の費用になるパターンですが、
 それでも教育費の総額は1000万円、大学4年間だけでも500万円程度が必要になる結果となりました。


パターン2:幼稚園から大学まで全て私立の場合
 全て私立ですから、多分最も費用がかかるパターンでしょう。
 教育費の総額はなんと3000万円、大学4年間だけでも800万円程度が必要になる結果となりました。

随分とお金がかかるもんなんですね。さらに地方在住の方であれば、これにプラスして自宅外生活費用も必要になるので、その額はさらに跳ね上がります。これでは子供を2人、3人とつくるのは難しそうです。子供1人でもやっとの状況ですから、少子化になるのも当たり前です。
実際にライフプランを作成する中でも、子供1人だと大丈夫でも、2人となると家計が破綻してしまうご家庭は非常に多いのが実態です。

他国と比較してみる

教育には多額の資金が必要であることは理解していただけたかと思います。では、日本以外ではどうなんでしょうか?
実際調べてみて分かったのですが、物価や教育の仕組み、価値観の異なる諸外国と教育費の数値そのものを入手する事も厳しく、また比べること自体も難しいという事が分かりました。そこで比較的入手し易い指標として公開されている
 ① GDPに占める教育支出の割合(国際比較)2019年
 ② 主要国の高等教育における資金源内訳(国際比較)2019年
を使って日本の教育費と諸外国との比較をしてみることにしました。

① GDPに占める教育支出の割合(国際比較)2019年

GDPに占める教育支出の割合、つまりその国の経済力の何%を教育に使っているのか、を示す指標です。当然数値が高いほど、子供の教育に国がお金を使っているということになります。
OECD平均が4.9%、G7平均が5%に対して日本は残念ながら4%でした。G7ではイタリアに続くブービー賞ですね。日本は教育の質もレベルも高いと思っていた(古い考えの)人間には少々残念な結果です。

② 主要国の高等教育における資金源内訳(国際比較)2019年

高等教育つまり大学等における教育費の負担割合です。実際にかかる教育費の何%を国が負担しているかを示す指標です。当然ですが国つまり公的資金源の数値が高いほど、子供の教育に国がお金を使っているということになります。
OECD平均が66%、G7平均が51.9%に対して日本は残念ながら32.6%でした。G7ではまたもやイギリスに続くブービー賞でした。なんと7割以上が私的資金源、つまり自己(家計)負担という事です。日本では教育費に1000万円以上もかかるのはあたりまえ、人生の3大資金と言われる訳です。

国の少子化対策の内容を確認する

では、ここで国の少子化対策の具体的内容を確認してみましょう。参考にしたのは内閣府が公表している2020年5月29日に閣議決された「少子化社会対策大綱(概要)~新しい令和の時代にふさわしい少子化対策へ~」で5つの基本方針が示されています。

1 結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくる
2 多様化する子育て家庭の様々なニーズに応える
3 地域の実情に応じたきめ細かな取組を進める
4 結婚、妊娠・出産、子供・子育てに温かい社会をつくる
5 科学技術の成果など新たなリソースを積極的に活用する

内閣府 少子化社会対策大綱(概要)より引用

この中で教育費負担軽減に関する具体的施策は見た限りではありません。あえて言うならば・・
2 多様化する子育て家庭の様々なニーズに応えるの中に
 ・子育てに関する支援(経済的支援、心理的・肉体的負担の軽減等)
の記述がありますが、具体的な施策は??です。少子化社会対策推進専門委員会(第6回)議事録に専門委員会、地方ブロック会合での意見として
・育児費用の社会化として、高等教育の教育負担まで社会的に平等化すべき(福岡県)
の一文がある程度で、あまり議論の活発化が期待できる内容では無さそうです。

何故こんな状況になってしまった?
何故

                                           

何故こんなにも教育費の負担が重くなってしまったのでしょうか?特に大学4年間でかかる教育費は最も深刻です。かくある筆者も子供が大学生の時期は欲しい物も買えず、ひたすら我慢の生活を強いられたことを思い出しました。
そこで、日本人の年収と大学の授業料の推移について調べてみました。ご存じの通り、日本人の年収はここ20年間全く増えていません。むしろ平均値では減少傾向であるとも言えます。筆者も含め身をもって感じてられる方も多いのではないでしょうか。
一方、大学の授業料は増加傾向にあります。
2000年以前は国立大学で年収の1/3程度、私立理系で年収の半分程度の負担で済んでいましたが、現在では国立大学で年収の半分程度、私立理系では年収と同額か以上となっています。この実態を見れば、やはり少子化(子供を2人以上もつことは厳しい)は必然的であることは明白です。

まとめ
まとめ
                                

今回の調査を通じて少子化の原因の一つは教育費の高騰と公的資金源の不足であると結論します。現在の状況では子供1人に対して1000万円~3000万円もの教育費がかかり、特に大学4年間の教育費は家計には重圧である事を考えると、ここにメスを入れない限り日本の少子化の流れは止められないと筆者は考えます。残念ながら国の方針を確認した限りでは具体的な施策は見当たりませんし、諸外国に比べて著しく国の資金注入が足りていない現実は無視できる状況ではありません。皆で声を上げ、子供2人以上でも安心して大学まで出してあげられる社会を作りたいものです。ファイナンシャル・プランナーは皆さんの教育資金作りのお手伝いをさせていただいております。困った時には何なりとご用命下さい。

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