定年退職後の各種制度の変更点1 社会保険はどう変わる?
初めに
会社員が会社を退職した場合、今まで加入してきた各種制度に変更が生じます。今回は、社会保険はどうなるのか考えてみたいと思います。当事務所でも会社を定年退職した場合や、少し間を置いて継続雇用や再就職する場合の社会保険制度の質問は非常に多い分野ですので、ここはしっかりと押さえておきましょう。
会社に勤務しているときは、社会保険について特に考えることがなかった人も、退職にあたっては社会保険について理解し、自分にとってよい選択をしなければなりません。
一般的に言う社会保険は健康保険、公的年金保険、雇用保険の3種類です。ではそれぞれの変更点について見て見る事にしましょう。
定年退職後の健康保険
退職後の健康保険は次の3つから選択します。
a. これまでの健康保険を継続する(任意継続被保険者になる)
b. 国民健康保険に加入する
c. 家族が加入する健康保険の被扶養者となる
この中で保険料を節約できるのは、c.の被扶養者となる方法ですが、家族の中に健康保険に加入している人がいなければ被扶養者になれないので、実質的にはaとbのいずれかを選択することになります。
任意継続保険について
喪失日の1日前までに継続して2か月以上の被保険者期間があり、喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することで、勤務していた会社が加入する健康保険組合を、退職後2年に限り継続することができます。
国民健康保険について
日本の健康保険制度は「国民皆保険」が原則のため、国内に住所があれば年齢や国籍に関係なく必ず健康保険に加入しなくてはいけません。なお、外国籍の方は在留期間が3か月以上の場合、加入が義務付けられています。
健康保険の判断フローチャート
詳細な説明は下記のコラムで説明をしていますので、ご参照下さい。
定年退職後の年金保険
国民年金
60歳以上の人は国民年金への加入義務はありませんので、60歳以降の定年退職者は年金への加入手続きをする必要はありません。20歳から60歳になるまでに国民年金の未納期間があり、国民年金の加入期間が480月に満たない場合、任意加入することができます。任意加入し年金の受給額を増やしたいという場合は、すみやかに任意加入の手続きを取る必要があります。ただし、60歳以降も再雇用等の継続雇用(厚生年金加入者)で働く場合には任意加入はできません。
厚生年金
再雇用等で働く場合は厚生年金に加入する事となります(上限70歳まで)。20歳から60歳になるまでに国民年金の未納期間がある場合、厚生年金に加入し続けると、老齢厚生年金の経過的加算額が支給されることにより、老齢基礎年金の未納分を穴埋めすることができます。
再雇用等で働く場合の厚生年金に関する詳細は以下コラムをご参照下さい。
定年退職後の雇用保険(基本手当)
雇用保険の手続きについては、退職後、勤務先から離職票が送られてくるので、再就職を希望する人は、ハローワークで求職の申込みをします。原則として1年以上雇用保険の加入期間があるなど、条件を満たして退職した人は、失業中に基本手当が支給されます。
基本手当がもらえる条件
・64歳以下で退職した場合
・失業状態にある場合
・退職前の2年間に雇用保険に1年以上加入実績がある事
・積極的に就職しようとする意志がある事
・いつでも就職できる健康状態にある事
・積極的に仕事を探しているにも関わらず仕事に就いていない事
支給額は離職理由と勤続年数、退職前の給与などによって決まります。基本手当日額は、退職前の給与に一定の給付率をかけた金額ですが、上限が決まっており60~64歳7150円です(毎年8月1日に見直しあり)。給付日数は、「定年退職」だと最大150日で、60歳で定年退職した場合、最高107万円程度給付されます。
最後に
今回は定年退職後に変更になる社会保険制度について説明をさせていただきました。各人の状況にもよりますが、この他にも今まで加入していた制度が定年退職によって変更になる可能性は多くあります。そこで、次回は継続雇用される場合の雇用保険、60歳以降の確定拠出年金、年末調整、確定申告、住民税の支払い方などについて説明をしようと思います。
誰でもFP相談室 村上