雇用保険の本丸 基本手当(失業保険)を理解する

雇用保険

雇用保険とは

雇用保険

雇用保険とは、失業したときに次の仕事に就くまでに必要な給付(所得保障や再就職支援)を受けられる社会保険(労働保険)の一種です。従って、雇用保険=失業給付というイメージが非常に強いのですが、他にも色々な場面で活用ができる制度です。
まずは雇用保険の加入条件です。下記の2条件が必要となります。
・31日以上継続して雇用される見込みであること
・週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用保険の保険料は従業員と雇用主の双方で負担します。保険料率は給与支払額の0.9%(本人0.3%、事業主0.6%)となります。本人の負担分は給与から天引きされます。
さて、前置きはこの位にして、今回は雇用保険の本丸、基本手当(俗にいう失業保険)について説明をしたいと思います。

基本手当(失業保険)とは

離職しても失業中の生活を心配せず再就職活動ができるように給付されるもので失業保険と言われる基本的な部分です。基本手当として離職前の給与の5割〜8割程度が支給されます。基本手当は申請後すぐに受け取れるわけではありません。ハローワークで所定の手続きをおこなったあとには、まず失業状態であることを確認するために7日間の待機期間があります。自己都合で離職した場合には、そのあとさらに3ヶ月間の給付制限期間が設けられていますので、注意しましょう。

休業前の賃金日額の考え方

給付金を計算する際に基本となるのは休業前にもらっていた日給です。
ハローワークでは「賃金日額」と呼び、原則として離職した日の直前6か月に毎月支払われた賃金
(賞与等は除く)の合計を180で割って算出した金額です。
賃金日額= 休業前6ヶ月間の給与(総支給額) / 180(日)

給付日数

基本手当の給付日数は退職理由によって異なります。

自己都合退職の場合

「一身上の都合」によって退職をした場合、給付日数は以下のようになります。自己都合退職の場合、基本手当を受給するまで待期期間とは別に3ヶ月の給付制限を受けることがあります。そのため、退職したら速やかに申請手続きを始めましょう。

会社都合退職の場合

会社の倒産、解雇や契約終了など特別な理由で退職した場合は「特定理由離職者」になります。このような理由は、会社都合退職や特定理由離職者になり、給付日数が自己都合退職より延長されることがあります。

基本手当の計算

基本手当は以下の式で計算することができます。
休業前の賃金日額 × 給付率(45%〜80%) = 基本手当日額
給付率は年齢と賃金日額によって決定します。

厚生労働省 都道府県労働局・ハローワーク LL030728 保 02より転載

モデルケースで試算してみます

Aさん(62歳)、休業前6カ月の総支給額は1.440,000円、被保険者期間は20年以上
自己都合で退職したものとします。

① まずは賃金日額を計算します。
  1.440,000円÷180日=8,000円 となります。

② 基本手当支給額を計算します。
 62歳で賃金日額が8000円なので、下記二つの式から基本手当日額(y円)を計算します。
 y= 0.8w-0.35{(w-4,970)/6,030}w の式にあてはめて計算する
   0.8×8,000-0.35((8,000-4,970)/6,030)×8,000=4,993
 y= 0.05w+4,400の式にあてはめて計算すると
   0.05×8000+4,400=4,800
  従って基本手当日額(y円)は低い方の値 4,800円となります。

③ 給付総支給額を計算します。
  モデルケースの場合、給付日数は150日が限度になるので
  給付総支給額は 4,800円 × 150日 = 720,000円 と計算する事ができます。

  ちなみに、月額は28日分になるので、4,800円 × 28日 = 134,400円 と計算する事ができます。

月額早見表が便利

前項で計算する方法を解説しましたが、実際に計算するのはかなり面倒だと思います。そこで、ひと月でどのくらいの金額の基本手当を受給できるのか、月額早見表を作成してみました。

基本手当受給の手順

① 退職する
  退職(定年退職・自己都合退職など)や解雇などにより、事業主との雇用関係が終了します。
② 離職票を受け取る
  離職後、しばらくすると離職した会社から離職票が届きます。
③ 求職の申込みをする
  離職票等を持参して、ご本人の住所を管轄するハローワークへ行き、求職の申込みをします。
④ 受給資格の決定を受ける
  離職票の提出と求職の申し込みをすると、ハローワークは受給資格を決定します。
⑤ 雇用保険受給者説明会に出席する
  案内された日に、雇用保険受給者説明会に出席します。
⑥ 待期期間 7日間が満了する
   基本手当は、待期期間(7日間)の間は支給されません。
⑦ 給付制限
  定年退職や自己都合の場合はさらに3か月間は基本手当が支給されません。
⑧ 求職活動をする
  ハローワークの職業相談を利用するなどして、新しい仕事を探します。
⑨ 失業の認定を受ける(1回目)
    指定された(失業)認定日にハローワークに行き、失業認定申告書を提出します。
⑩ 基本手当が支給される
  失業の認定を受けたら、失業の認定を受けた日数分の基本手当が振り込まれます。
⑪ 引き続き、求職活動する
  引き続きハローワークの職業相談を利用するなどして、新しい仕事を探します。
⑫ 失業の認定を受ける(2回目以降)
  失業認定日は、原則4週ごとに指定されます。
  基本手当の受給が終わるまで、又は、就職が決まるまで、繰り返します。
⑬ 再就職
  再就職すると、再就職手当や高年齢再就職給付金などを申請できる場合があります。
⑭ 基本手当 支給終了

注意事項

雇用保険の失業給付と年金は同時に受けられない

男性は昭和36年4月1日以前に生まれた方、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた方であれば、65歳まで「特別支給の老齢厚生年金」をもらえる権利が発生します。しかし、この特別支給の老齢厚生年金を受給している方が基本手当を受けると、特別支給の老齢厚生年金は支給停止になります。
従って既に特別支給の老齢厚生年金を受給している方が基本手当を受給しようとする場合、基本手当と年金のどちらがお得か良く考えて決める事が重要です。
未だ特別支給の老齢厚生年金を受給されていない方であれば、受給開始年齢になる前に基本手当の申請をする必要があります。
昭和36年4月1日以降に生まれた男性、昭和41年4月1日以降に生まれた女性であれば、特別支給の老齢厚生年金は無く、老齢厚生年金の支給は65歳からになります。従ってこの場合、65歳に一番近い時期つまり64歳と11ヶ月で退職をすると、150日分の基本手当と老齢厚生年金を受け取れるようになります。

65歳の誕生日の前日以降に退職すると「高年齢求職者給付金」が支給される

65歳の誕生日の前日以降に退職すると、基本手当ではなく、「高年齢求職者給付金」という一時金がもらえます。雇用保険の被保険者であった期間が1年未満の場合は30日分、1年以上の場合は50日分です。基本手当の様に150日分の支給ではありませんが、特別支給の老齢厚生年金は支給停止にならないので、既に65歳以下で特別支給の老齢厚生年金を受給されている方にはお勧めの方法です。

最後に

最後に

再就職先が決まらないままで仕事を辞めた時は、速やかにハローワークで基本手当の申請をしましょう。基本手当は申請から一定期間をおかないと受け取ることができませんので、申請が遅れるとその分支給も遅れてしまいます。基本手当を受け取ることができるのは離職の日の翌日から原則1年以内なので、注意して下さい。
また、再就職先が決まったときに給付日数が3分の1以上残っていれば、再就職手当を受け取る事ができます。早く就職すればするほど再就職手当の金額も高くなるので、早めに再就職先を決めるのも良いでしょう。

誰でもFP相談室 村上

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