「老後資金2000万円必要」は本当か?国の統計データから検証する
目次
老後資金2000万円問題とは
数年前、金融庁が公表した金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中で「老後資金は2,000万円不足」といった内容が世間的に大きく取り上げられ、話題になった事は記憶に新しいところです。老後資金=2000万円という数値は非常にインパクトが強く、日常の相談業務の中でも高い頻度でお客様から出てくる言葉です。では、本当に老後は2000万円不足するのでしょうか。試しに国が発表している統計データを元に計算をしてみる事にしました。当の原稿を書いている私本人も、実際これから計算をしてみないと結論はわからないという状況で、結果がどうなるか、今から楽しみでもあり、不安でもあります。ではこれから計算してみましょう。(今書いている時点では全く結果が分かっていません)
計算の元となる国の統計データを集めました
平均寿命
まず必要になるのは、老後何歳まで生存するかです。そこで、厚生労働省が発表した最新の平均寿命を調べてきました。
男性は81.41歳、女性は87.45歳という結果でした。計算上小数点はあまり都合がよろしくないので、数値を切り上げして男性は82歳、女性は88歳という事にします。
従って、年金を受け取る年齢65歳から男性は17年生存、女性は23年生存するとして計算する事になります。
収入と支出
もう一方で重要なのが、老後はいくら収入があって、いくら支出するのかです。正直、これは人それぞれであり、収入が多い人は多く支出するでしょうし、収入が少ない人は支出も少ないと思われます。そこで最も信頼できそうな統計データを使う事にしました。ネットで調べてゆくと総務省、厚生労働省、金融庁の資料の中にもある事を確認しましたが、私達FPが頼りにする日本FP協会が採用しているデータは総務省だという事もあり、ここは総務省の発表データを採用する事にしました。
(図1、図2は総務省「家計調査報告-家計収支編(2019年」より引用)
図1:高齢夫婦無職世帯の家計収支 -2019年-
図2:高齢単身無職世帯の家計収支 -2019年-
この総務省の発表データによると
高齢夫婦無職世帯のひと月あたりの不足分(赤字)は33,269円
高齢単身無職世帯のひと月あたりの不足分(赤字)は27,090円 という事になります。
実際に必要となる老後資金を計算してみます
先に調べた収入の不足分(赤字)は貯蓄(老後資金)から毎月取り崩してゆく事になります。
① 夫婦二人の生存期間は17年なので、
33,269円 × 12か月 × 17年 = 6,786,876円 となります。
② 女性単身での生存期間は6年なので、
27,090円 × 12か月 × 6年 = 1,950,480円 となります。
従って①と②の合計額 6,786,876円 + 1,950,480円 = 8,737,356円
つまり874万円が老後に必要な資金額となります。
どうも金融庁が発表した2000万円とは開きがありそうです。
人生100年として再計算してみます
どうも平均寿命で計算すると明らかに金融庁が発表した2000万円とは開きがある事がわかりました。そこで、人生100年と言われていますので、男女とも100歳まで生存するとして再度、計算してみたいと思います。(実際100歳まで生存する方も居られるとは思いますが、現在の平均寿命が男性82歳、女性88歳から考えると、まだまだ先の様な気がするのですが・・・)
夫婦二人の生存期間は35年なので、
33,269円 × 12か月 × 35年 = 13,972,980円 となりました。
つまり夫婦ともに100歳まで生存した場合、1400万円が老後に必要な資金額となり、やはり金融庁が発表した2000万円とは開きがありそうです。
結論
今回実際に計算し、金融庁が発表した老後資金2000万円は、夫婦ともに100歳以上生存し、余裕ある生活をする場合に必要な資金額である事が分かりました。年をとればいずれ介護が必要になるかもしれませんから、確かに老後資金は多いに越した事はありません。しかし、2000万円が無いと老後は生きてゆけない、などという世間の風潮は誤りである事がわかりましたので、私も今後の相談業務において注意をして行こうと思います。
今回、老後資金2000万円までは必要なさそうである事がわかりましたが、とは言っても1000万円程度は必要である事も明確になりました。この1000万円をどの様に準備するのか、子育てが終わった50代の今こそが最大のチャンスです。決して遅くはありませんので、今から自分に合った資産作りを始めようではないですか。FPは皆さんの資産作りをお手伝いいたします。
誰でもFP相談室 村上
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