大手資産運用会社からは金融商品を買わない方が良い・・・は本当か?
目次
はじめに
先月(2021年6月)、金融庁は資産運用会社等とのモニタリングや対話を通じて把握した資産運用の高度化に向けた取組みの進捗状況、それらを踏まえて更なる取組みが必要と考えられる事項や資産運用ビジネス全体の課題及び当庁の対応について、「資産運用業高度化プログレスレポート2021」として取りまとめ、公表しました。詳細をご覧になりたい場合はこちらを参照下さい。
このレポートには私達の様な個人投資家が投資信託等を購入する際の注意すべき点などで有益な情報がありましたので、今回は 今回は 金融庁が公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2021」を元に、 「大手資産運用会社から金融商品を買わない方が良いのか」 というテーマで解説してみたいと思います。
資産運用会社別ファンドパフォーマンス分布図より
上の図はアクティブ型資産運用会社別の純資産総額及びファンドパフォーマンス分布を示すものです。横軸の左にゆくほど純資産総額が大きい運用会社(つまり大手の金融機関)、右にゆくほど純資産総額が小さい運用会社になります。赤い丸印はその運用会社(金融機関)の平均シャープレシオです。
「アクティブ型」とは、それぞれのファンドの運用方針に沿い、市場の平均以上の利益を出そうとするものです。例えば、日経平均株価やTOPIXのようなベンチマークを実際の運用が上回れば、良好な運用結果だったと評価できます。
ちなみにシャープレシオとは、収益率(実際は無リスク資産の収益率を引いた値)を収益率の標準偏差で割った値です。投資のリスクに対して、どれくらいのリターンが得られるかを表す指標で、運用効率の高さを示します。数値が大きいほど、リスクに比べて大きなリターンを得られたことになり、効率の良い運用と評価できます。
純資産総額が小さい運用会社の方がシャープレシオが高い傾向
見ていただいた通り、 一部の例外はあるものの、総じて 純資産総額が大きい運用会社(つまり大手の金融機関)よりもファンド数が少なく純資産総額が小さい運用会社の方がシャープレシオが高い傾向がわかります。徹底した企業調査に基づく投資判断等により良好なパフォーマンスを実現し、平均レシオが高い運用会社が見られるとレポートの中で金融庁は指摘しています。
インデックス型ファンドのシャープレシオの平均にも届いていない現実
また、ファンド数が多く純資産総額の大きい 運用会社においては、多様なファンドを手掛ける中で、インデックスファンドの平均レシオを下回るファンドが多い傾向が見られました。つまり、大手が運用しているアクティブ型ファンドはインデックス型ファンドよりも運用成績が悪いという事を言っています。一般的に アクティブ型ファンド はファンドマネージャーが自身や運用会社の分析能力や調査・経験を駆使して、リスクをとりつつも、ベンチマークを上回る運用成績を達成しようとするファンドですので、インデックス型ファンドよりも高い信託報酬が徴収されています。高い信託報酬を支払っているにも関わらず、安い信託報酬のインデックス型ファンドよりも運用成績が悪いのであれば、 アクティブ型ファンド を購入する意味は全くありません。
独立系資産運用会社のファンドパフォーマンス
金融庁のレポートの中では、独立系資産運用会社についても解説をしています。
以下はレポートからの引用になります。
• 特定の大手金融グループに属さない独立系等資産運用会社においては、自社の目指す姿を明確にし、投資先企業との対話を重視する徹底した企業調査、顧客に対する企業理念やファンドの運用状況の丁寧な説明、資産運用会社自らによるファンドの販売(直販)により、投資先企業や顧客との信頼関係を構築する取組みが見られる。
• 独立系等資産運用会社の中には、アクティブ平均を上回る安定したパフォーマンスを実現している社がある。
• 直販を重視する社では資産運用規模の拡大や、長期運用のためのファンドマネージャーやアナリストの確保と育成、事業継続のための経営者の育成に課題があるとする社が多い。
• 顧客に安定的なリターンを提供するため、安定的な経営と運用に向けた取組みにより、強みが明確化された特色ある内外の資産運用会社が増加することで競争環境が醸成され、資産運用業全体の高度化が図られることが期待される。
上の図は独立系等資産運用会社5社の5年k何のシャープレシオの推移を示したものです。確かに5社のシャープレシオは全てアクティブ型ファンドの平均を上回っており、またインデックス型ファンドの平均よりも概ね高い傾向を示していることがわかります。
まとめ
今回は 金融庁が公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2021」を元に、 「大手資産運用会社から金融商品を買わない方が良いのか」というテーマで考えてみました。
運用資産規模が大きい資産運用会社のファンドは運用効率が劣るものが多いこと、特にアクティブ型ファンドであるにも関わらずインデックス型ファンドよりも運用成績が劣るという事実は非常に重要ですよね。また、独立系資産運用会社のファンドの方がパフォーマンスが良いという傾向もわかりました。
投資信託は数ある資産運用方法の中でも比較的にリスクは低い方法ですが、色々な費用(購入手数料、信託報酬等のコスト)がかかるのも事実です。どのファンドを購入すれば良いのか、費用対効果を良く考えて選びたいものです。
誰でもFP相談室 村上