投資信託 販売会社における比較可能な共通KPI

KPI
はじめに

この記事を読んでいただいている読者の皆さん、色々な方法で資産を増やす努力をされているのではないかと推察いたします。さて、資産運用の方法として、当事務所では比較的にリスクが少なく、素人でも手が出しやすい投資信託の運用を推奨し、その運用方法について過去に色々とお話をさせていただきました。今回はこの投資信託を購入するにあたり、金融事業者を選ぶ際に参考となる「比較可能な共通KPI」なるもののお話を少ししたいと思います。

KPIって何?

まずはKIPという言葉から説明してゆきましょう。
KPIとは Key Performance Indicator(s) の頭文字で、読んで字のごとく、パフォーマンス(性能)を測るための主要な指標のことです。あえて日本語訳すると「重要業績評価指標」となります。事業目標を達成するために実行すべきプロセスが、適切に実施されているかを数値化して評価するものです。KPIを適切に設定することで、目標が明確になり、方向性が統一されます。このKIPを事業ごとに「共通化」することで、見えにくかったパフォーマンスの現状を「横並びに比較」することが出来る様にもなります。例えば私達が投資信託を購入する金融事業者を選ぶ際に横並び比較できる数値があると、便利であり安心できますよね。

投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIがある

 これまでに、多くの金融事業者が業務運営を客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)を公表してきました。しかし、これら自主的なKPIの内容はばらならであり、顧客がKPIを用いて金融事業者を選ぶことは容易ではありませんでした。そこで金融庁は長期的にリスクや手数料等に見合ったリターンがどの程度生じているかを「見える化」するために、比較可能な共通KPIとして3つの指標を公表する様、金融事業者に求めました。

 ① 運用損益別顧客比率
 ② 投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン
 ③ 投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターン

① 運用損益別顧客比率
 投資信託を保有している顧客について、基準日時点の保有投資信託に係る購入時以降の累積の運用損益(手数料控除後)を算出し、運用損益別に顧客比率を示した指標です。この指標により、個々の顧客が保有している投資信託について、購入時以降どれくらいのリターンが生じているか見ることができます。
② 投資信託預り残高上位 20 銘柄のコスト・リターン
③ 投資信託預り残高上位 20 銘柄のリスク・リターン
 設定後5年以上の投資信託の預り残高上位 20 銘柄について、銘柄毎及び預り残高加重平均のコストとリターンの関係、リスクとリターンの関係を示した指標です。これらの指標により、中長期的に、金融事業者がどのようなリターン実績を持つ商品を顧客に多く提供してきたかを見ることができます。

共通KPIを用いた分析結果

2019年に金融庁が投資信託の「販売会社における比較可能な共通KPIの公表状況」公開しました。私達の様な個人投資家としては大変興味深い結果でしたので、その中から幾つかを紹介したいと思います。
詳細が必要な方は下記URLをご参照下さい。

https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20190809_fd/002.pdf

① 運用損益別顧客比率の分析結果

要するにどのくらいの顧客(投資家)がどの程度儲かっているのか、を調査した結果ですね。この結果はかなり衝撃的な数値で、実に2018年には46%、2019年でも35%もの顧客の運用損益がマイナスであった事を示しています。筆者を含め、多くの投資アドバイザーが投資信託は比較的リスクが少なくリターンも期待できる投資手法であることを謡っていますが、少なくとも今回の調査結果はそれを否定する様な結果でした。1/3以上の顧客が損をしています、なんて数値はなかなかお目にかかれるものではありませんので、結構衝撃的な結果ですよね。

② 投資信託預り残高上位 20 銘柄のコスト・リターンの分析結果

要するにコストをかけた分だけ儲かっているのかを見ることができます。グラフが右肩上がりになっていれば、コストに見合ったリターンを得ていることになりますが、残念ながらその様な傾向は確認することはできませんでした。(むしろ右肩さがりの傾向)ばらつきも大きいので何とも言えませんが、コストをかけても儲かる訳ではないと言えそうです。また、旧来の対面型証券会社や銀行のパフォーマンスの悪さ、一方、ネット系証券会社や投信会社のパフォーマンスの良さも浮き彫りになっています。

③ 投資信託預り残高上位 20 銘柄のリスク・リターンの分析結果

要するにリスクとリターンの関係を調査した結果です。グラフの右上になるほどハイリスク・ハイリターン、右下になるほどローリスク・ローリターンを示しています。傾向としては一応、セオリー通りになっている様には見受けられます。

まとめ
解説

今回は金融事業者のパフォーマンスの現状を「横並びに比較」することが出来る「比較可能な共通KPI」について、金融庁が公開した 「販売会社における比較可能な共通KPIの公表状況」 を元に考えてみました。その結果、少なくとも1/3程度の顧客が損をしているという事実、そしてコストを掛けても儲かる訳ではないという事実が浮き彫りになりました。
金融事業者を共通の指標で横並びに比較する事は、私達の様な投資家にとっては非常に有益な事です。2019年時点で比較可能な共通KPIを公表したのは数ある金融事業者の内のたった281社のみでしたが、2021年現在では大半の金融機関が公表する様になり、横並び比較ができる様になりました。私達投資家は、この様な情報を有効に活用し、効果的な投資を実践したいものですね。

誰でもFP相談室 村上

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