令和5年度年金支給額引き上げは実質目減り そもそもマクロ経済スライドって何?
6月15日支給分から増額
1月20日に厚生労働省年金局より令和5年度の年金額改定について発表があり、令和5年度の年金額は、法律の規定に基づき、新規裁定者(67 歳以下の方)は前年度から2.2%の引き上げとなり、既裁定者(68 歳以上の方)は前年度から1.9%の引き上げとなったことは以前記事に書いた通りです。さて、令和5年度の年金改訂は4月からとなりますので、今月6月15日(木)に支給される4月、5月分から67歳以下の方で月額64,816円から66,250円へと1,434円の増額となります。
年金改定も実質目減りとは?
年金額の改定は、名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回る場合、新規裁定者(67 歳以下の方)の年金額は名目手取り賃金変動率を、既裁定者(68 歳以上の方)の年金額は物価変動率を用いて改定することが法律で定められています。
このため、令和5年度の年金額は、名目手取り賃金変動率(2.8%)、物価変動率(2.5%)に比べて新規裁定者は2.2%、既裁定者は1.9%と控えめの増加率となっています。つまり実質0.6%の目減りになるということになります。
そもそもマクロ経済スライドって何?
実質0.6%目減りの原因は、法律で定められているマクロ経済スライドによる調整の為ですが、そもそもこのマクロ経済スライドとは何でしょうか?
マクロ経済スライドとは、年金財政を健全化(抑制する)ための調整で、保険料を支払う現役世代の減少率と年金を受給する高齢者の増加率を合わせてスライド調整率分が引き下げられるという制度です。ただし、改定率がマイナスの時(つまり年金額が減額改定の時)にはマクロ経済スライドによる調整は行われず、また調整した結果、最終的な改定率がマイナスとなる様な調整も行われないことになっています。
マクロ経済スライドの仕組み
ただし、これにはもう一点付け加えることがあります。改定率がマイナスの時(つまり年金額が減額改定の時)にはマクロ経済スライドによる調整は行われないのですが、この未調整分は景気回復期となった翌年以降にキャリーオーバーされるという点です。
例えば2021年度、2022年度は改定率がマイナスで減額改定だったため、マクロ経済スライドは実施されず、合計▲0.3%が繰り越されていました。2023年度は景気回復期となったため、本来であれば▲0.3%であった調整に未調整分▲0.3%がキャリーオーバーされて▲0.6%となりました。
最後に
今回はマクロ経済スライドに焦点をあててみましたが、いかがだったでしょうか。テレビのニュースなどでマクロ経済スライドという名前だけは耳にした方は多いと思いますが、その中身まで理解されている方は少ないと思います。言い過ぎかもしれませんが、要するに経済成長に連動して年金も増やそうという制度と思いきや、経済成長よりも年金の増加を抑制しようとする制度だったんですね。経済の成長とともに将来、数字上の年金額は増える可能性がありますが、物価上昇に対しての増加分は抑制されることから、年金額の水準はますます低くなる可能性が考えられます。私達はこの様な現実をよく理解した上で、年金だけに頼らなくても済む老後資金を考える必要があります。
エニーライフラボ