在職老齢年金受給者に朗報 多くの方で6月からの支給額が大幅増

在職老齢年金とは
何

60歳以降も厚生年金に加入しながら受給する老齢厚生年金を在職労齢(厚生)年金といいます。対象者は給与をもらって働いている年金受給者(つまり会社員)であり、60歳以降に独立した個人事業主やフリーランスで働く方など、厚生年金に加入していない方には適用されません。年金額と給与額に応じて年金額は減額され、場合によっては全額支給停止になる場合もあります。
この減額(または支給停止)の基準が、令和4年4月1日から年金制度改正によって変更されました。そこで、今回はこの在職労齢(厚生)年金の減額(または支給停止)について詳細を説明しましょう。人によっては6月から支給される年金額が大幅増になる方もいらっしゃると思われます。

ちなみにこの在職労齢(厚生)年金ですが、60歳から64歳まで方の場合は特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の事であり、年齢や性別によって支給開始年齢が異なるので注意しましょう。(下図参照)

報酬比例
減額(支給停止)基準額の引上げ

令和4年3月までの制度では、60歳から64歳までの人の場合、賃金と厚生年金の合計額が月28万円を超えると支給される年金が減額されていました。
今回の改正(令和4年4月以降の制度)では、賃金と厚生年金の合計額が月47万円までは減額されない様に緩和されました。
ちなみに、65歳以上の人の場合は現在でも減額される基準額が月47万円となっていますので、今回は変更ありません。

モデルケースで試算してみます

モデルケース : Aさんの場合

 生年月日:1959年(昭和34年)9月7日生まれ(62歳)
 性別:女性
 61歳から特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)
 の受給が可能です。

 収入内訳 
  ①特別支給の老齢厚生年金月額      10万
  ② 雇用による収入(総報酬月額相当額)  20万円
  ③ 企業年金月額            5万円
  —————————————————————–
     合計                                         35万円

令和4年3月までの旧制度では・・・

合計基準額が28万円を超えるので、特別支給の老齢厚生年金は

( 35万円 – 28万円 )× 1/2 = 3.5万円 が減額されます

令和4年4月からの新制度では・・・

合計基準額が47万円以下なので、特別支給の老齢厚生年金は

減額されません

高年齢雇用継続給付金を受ける場合は要注意
高年齢雇用継続給付金

ただし、雇用保険から高年齢雇用継続給付金を受給している場合は要注意です。
雇用保険の高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった方を対象に、最高で賃金額の15%に相当する額を支給する制度です。
特別支給の老齢厚生年金などの65歳になるまでの老齢年金を受けている方が雇用保険の高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金)を受けられるときは、在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。
支給停止される年金額は、最高で賃金(標準報酬月額)の6%に当たる額になります。
支給停止の基本的な仕組みは以下のイメージ図の様になります。

先ほどのモデルケースで試算してみましょう。雇用保険から高年齢雇用継続給付金を受給する場合、

収入内訳 
  ① 特別支給の老齢厚生年金月額      10万円
  ② 雇用による収入(総報酬月額相当額)  20万円
  ③ 企業年金月額             5万円
  ④ 高年齢雇用継続給付月額       3万円
  —————————————————————–
     合計                                         38万円

合計基準額が47万円以下なので、本来であれば特別支給の老齢厚生年金の減額は無いはずですが、高年齢雇用継続給付金を受給しているが故に収入20万円の6%に相当する 1.2万円 が減額になってしまいます。

まとめ
説明

さて、今回の話題「在職老齢年金受給者に朗報 多くの方で6月からの支給額が大幅増」の概要はご理解いただけたでしょうか。対象となる方は現在、特別支給の老齢厚生年金などの65歳になるまでの老齢年金を受けている方のみとなる制度です。2022年4月現在で男性であれば概ね63歳以上、女性であれば概ね62歳以上の方が対象ですので、この恩恵を受ける方は限られているのは事実ですが、今回の改正で高齢者の就労意欲の向上に寄与する事は間違いないと思われます。60代で隠居するのは現実的には早すぎますから、定年の延長とともに、さらなる国の制度改正には期待したいところです。

誰でもFP相談室 村上

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