2022年4月1日 本日からの新しい年金制度改正点を確認する

はじめに

今年も早いもので、本日4月1日から、2022年度が始まりました。一般企業では本日は新入社員の入社式なども開催され、新年度として気分一新されているのではないでしょうか。国の制度も同じで、本日から色々な改正点が適用開始されました。その中でも私達FPの業務に最も関係が深い国の制度の変更点と言えば、やはり年金制度改正と言っても良いでしょう。年金制度はその時の社会情勢に従い都度見直しがされているのですが、今回の改正は本格的に年金生活になる前の準備期間に関する部分が大きく見直されました。特に年金を受取りながら継続して働く世代の方々の就労意欲の向上に寄与する制度改正など、評価できる点が多いのが特徴です。そこで今回は、本日スタートした新しい年金制度の改正点について、確認してゆきましょう。

公的年金支給額の見直し
年金

本題の年金制度の改正点のお話をする前に、まずは本日令和4年4月(6月15日支給分)以降の年金額の見直しについて確認しましょう。日本年金機構によると、法律の規定により、令和3年度から原則0.4%の引き下げとなりました。

国民年金(老齢基礎年金)の満額が従来の月額65,075円から64,816円に引き下げられました。厚生年金(夫婦2人分の標準的な年金額)も同様に220,496円から219,593円に引き下げられる見込みです。国民年金(老齢基礎年金)で259円、厚生年金で903円減額される事になりました。
改定の指標である賃金が新型コロナウイルス禍の影響などで下がったためです。引き下げは2年連続で、近年では、平成26年度の0.7%減に次ぐ水準となりました。たった数百円の引き下げですが、度重なる減額に加え、原油高や円安に伴って最近の物価は上昇傾向ですので、高齢者の生活は益々厳しくなりそうです。

今回の年金制度改正の骨子
ポイント

今回改正された年金制度改正法の骨子は以下の4点となります。
 ・厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大されます
 ・在職中の年金受給の在り方が見直されます(在職定時改定と在職労齢(厚生)年金の改正)
 ・受給開始時期の選択肢が拡大されます
 ・確定拠出年金の加入可能要件が見直されます
では次の項で、具体的に改正内容を詳しくみてみましょう。

厚生年金保険・健康保険の適用範囲の拡大

現在、パートなどの短時間労働者を厚生年金に加入させる義務を負うのは、従業員「501人以上」という大企業のみです。2022年4月に施行する年金制度改正法では、2022年10月からは「101人以上」の企業、2024年10月からは「51人」以上の企業にも、短時間労働者を厚生年金に加入させる義務が生じます。

また、短時間労働の健康保険の被保険者の勤務期間要件について、現在は勤務期間1年以上が必要となっていましたが、改正後は2カ月以上の要件が適用される様になります。つまり、フルタイムの労働者と同様、短時間労働者でも厚生年金・健康保険被保険者となることができ、将来の年金額を増やす事ができる様になりました。

在職中の年金受給の在り方の見直し

現在、退職等により厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の額は改定されませんでしたが、今回の改正で「在職定時改定」が新たに導入されることになりました。
現行の制度では65歳以降、老齢厚生年金を受給開始しても再雇用等で働いた場合、退職時または70歳到達時(資格喪失日)以外に老齢厚生年金額が変更になることはありませんでした。
今回導入される「在職定時改定」は、この問題を解決するため、65歳以降に働いている場合も毎年1回、直近1年間に納めた年金保険料の実績に応じて老齢厚生年金額に反映される事になりました。このことは65歳以降の就労意欲の向上に寄与するものと期待されています。

また、60歳から64歳までの人の場合、賃金と厚生年金の合計額が月28万円を超えると支給される年金が減額されていました。在職労齢(厚生)年金今回の改正では、賃金と厚生年金の合計額が月47万円までは減額されない様に緩和されました。ちなみに、65歳以上の人の場合は現在でも減額される基準額が月47万円となっていますので、今回は変更ありません。

受給開始時期の選択肢の拡大

現行制度は、年金支給開始年齢は65歳ですが、受給時期を5年繰り上げ支給、または5年繰下げ支給する事ができる様になっています。
繰り上げた場合、一カ月あたり0.5%が減額されますので、5年繰り上げた場合は30%の減額になります。繰り下げた場合、一カ月あたり0.7%の増額されますので、5年繰り下げた場合は42%の増額になります。今回の改正では、
・繰下げ支給の年齢を75歳まで範囲を広げました。75歳で受給を始めた場合、84%の増額になります。
・繰り上げ受給の減額率を従来の0.5%から0.4%に緩和されます。

確定拠出年金の加入可能要件の見直し

事業主が掛金を拠出する企業型確定拠出年金(DC)、加入者自身が掛金を拠出する個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入要件と受給開始時期の見直し、確定給付企業年金(DB)の支給開始時期の見直し、中小企業向け制度(簡易型DC、iDeCoプラス)の対象範囲の拡大がされています。

企業型確定拠出年金(DC)の加入要件
 現行制度では65歳未満ですが、改正後は70歳未満になります。(2022年5月より)

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入要件
 現行制度では60歳未満ですが、改正後は65歳未満になります。(2022年5月より)

企業型確定拠出年金(DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)の受給開始時期
  現行制度では60歳~70歳ですが、改正後は 60歳~75歳になります。(2022年4月より)

確定給付企業年金(DB)の支給開始時期
  現行制度では60歳~65歳までの間で設定しますが、改正後は 60歳~70歳までの間で設定されます。 (2020年6月5日より施行済み)

中小企業向け制度(簡易型DC、iDeCoプラス)の対象範囲の拡大
 実施可能な企業の従業員規模が、現行制度では100人以下ですが、改正後は300人以下に範囲が拡大されます。(2020年10月より施行済み)

企業型確定拠出年金(DC)加入者の個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入
 現行制度では各企業の労使の合意が必要ですが、改正後は不要となり、原則誰でも加入できるようになります。(2022年10月より)

最後に
最後に

本日から適用された令和4年度年金制度改正点、いかがでしたか。年金支給額の減額は高齢者には痛手ですが、在職中の年金受給の在り方の見直しについては一定の評価ができると考えています。特に在職労齢(厚生)年金の改正は、年金を受取りながら継続して働く世代の方々の就労意欲の向上に寄与する制度として評価できます。確定拠出年金の運用も75歳まで可能となりましたので、老後資金作りには朗報です。私達はこの様な制度改正を上手に使って、老後資金を有効に形成・運用したいものです。

誰でもFP相談室 村上

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