日経平均株価のルール変更を解説する
目次
はじめに
日本経済新聞社は7月5日、日経平均の算出要領と銘柄選定基準の一部を変更すると発表しました。株価水準調整に用いていた「みなし額面」を「株価換算係数」に改めて係数は原則1とするものです。同時に「採用銘柄の株価水準が著しく高い場合、市場への影響を抑える」狙いで係数を0.1~0.9に設定、組み入れ時のウエートが1%以内になるようになります。新ルールは2021年10月の定期見直しから適用するという事です。
とは言っても、素人には何のことを言っているのか、ちんぷんかんぷんですよね。そこで今回は、筆者なりに理解した事を可能な限り分かり易く解説してみたいと思います。
変更の背景
では今回の変更に至った背景について解説しましょう。
現在の日経平均株価はファーストリテイリング(ユニクロ)などの一部の株式の比重が極めて高く、指標性として問題がありました。下表は日経平均指数ウエイトの上位5社の状況を示したものです。
日経平均株価に占めるウエイトが10%を超える銘柄が存在し、その一つの銘柄の影響で日経平均が大きく動いてしまうという問題です。ちなみに同じく日本を代表する株価指数TOPIXではこの様な事はありませんでした。例えばファーストリテイリング1銘柄の株価が10%値上がりしただけで、日経平均は1%つまり現在の水準ではおよそ300円上がってしまう計算になります。さらに上位5銘柄だけで日経平均の実に25%を占めているという事もあり、公に使われる指標としては少々問題がありました。
逆に日経平均指数ウエイトの下位5社の状況を見るとさらに深刻です。例えばファーストリテイリングと三菱自動車のウエイトを比較すると、三菱自動車のウエイト(0.004%)はファーストリテイリングの実に2500分の1しかない事がわかります。 つまり、現在の日経平均株価は日経平均指数ウエイトの上位銘柄の値動きだけが反映される構造となっており、225銘柄の値動きにはなっていないのです。
ルール変更の詳細
今回のルール変更の骨子は先に説明した通り、一部の株式の比重が極めて高いという問題を修正しようという内容になっています。
新規採用銘柄の設定ルール(計算方法)の変更
従来は、構成銘柄の株価を「みなし額面換算」した後で合計し、除数で割って算出していました。具体的のには、それぞれの銘柄の株価を額面50円に換算し、約27.7で割った後で225銘柄を合算するという方法です。
改訂後は、構成銘柄の株価を「株価換算係数」で調整した後で合計し、除数で割って算出されます。
とは言ってもこれも何のことだか良くわかりませんよね。もう少し簡単に説明してみましょう。
新規採用銘柄の株価換算係数は原則1になります。ただし、株価が日経平均採用銘柄の株価合計の1%を超えている場合は、1以外の値(0.1~0.9で、0.1刻みの値)を設定し、指数ウエイトが1%以下に抑えようという事です。
例えば、現在日経平均には採用されていない値がさ株の代表、任天堂の場合で計算してみましょう。
2021年7月現在の日経平均構成銘柄の採用株価合計の1%は約7,760円となります。
任天堂の株価は約63,000円程度でしたので、日経平均構成銘柄の採用株価合計の1% 約7,760円を大きく超えています。そこで株価換算係数を求めると 7,760円÷63,000円=0.123 となります。
株価換算係数は0.1刻みで設定するので、この場合は0.1となります。
つまり任天堂の株価は 63,000円×0.1=6,300円 として日経平均に組み入れられる事になります。
定期見直し基準の変更
従来は原則、毎年1回、10月の第一営業日に銘柄の入れ替えが実施、銘柄数に上限はありませんでした。
改訂後は原則、毎年1回、7月末を基準日として10月の第一営業日に銘柄の入れ替えが実施、銘柄数は上限3銘柄となります。
構成銘柄の選定基準の変更(2022年4月から)
従来は東証1部上場銘柄のみから225社が選定されていました。
改訂後は東証プライム市場上場銘柄から選定されることになります。
どの様な銘柄が採用されるのか?
銘柄の定期見直し基準の重要ポイントは「市場流動性」との事です。
・過去5年間の売買代金が高い物
・過去5年間の売買高当たりの価格変動率が高い物
の2つの指標で見た市場流動性の上位450銘柄を「高流動性銘柄群」として認定、この中から選定がされる様です。また、市場流動性順位が上位75位以内となった未採用銘柄は優先的に採用、市場流動性順位が451位以下の銘柄(高流動性銘柄群に属さなくなった銘柄)は除外されます。
具体的な銘柄は?
では具体的にどの様な銘柄が新規採用されるのでしょうか。
過去5年間の売買代金、過去5年間の売買高当たりの価格変動率から推測すると、任天堂、キーエンス、日本電産、村田製作所あたりが選定される可能性が高いと言われています。大方の予想では任天堂は確実であろうと言われています。任天堂は日経平均銘柄採用を機に高値になる可能性も考えられるので、株を買っておく価値があるかもしれませんね。一方、日経平均株価に占めるウエイトが10%を超える銘柄、ファーストリテイリングの株価は5月連休明けの変更案の公表とともに下落傾向が続いています。現在の日経平均がS&P500やNYダウに比べて低迷している原因の一つになっていると言えるかもしれません。
誰でもFP相談室 村上
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