個人型確定拠出年金(iDeCo) その3 定期預金を選択するメリットはあるのか?
はじめに
ここまで2回にわたって個人型確定拠出年金(iDeCo)制度の概要、始め方、商品の選択方法などを説明させていただきました。今回は、定期預金などの元本確保型商品で運用する意味があるのか、考えてみたいと思います。iDeCo制度の中で行う定期預金は、一般銀行で行う定期預金とは少々異なる点がありますんので、ここを中心に説明したいと考えています。
iDeCoのメリットとデメリット
iDeCoの最大のメリットは、
掛金を拠出する時、運用している間、年金を受け取る時に税制優遇があることです。
1、小規模企業共済等掛金控除の対象になる
iDeCoで拠出した掛金は、全額が所得控除の対象になります。課税所得から年間の掛金額が差し引かれ、所得税と住民税が軽減されます。
2、運用益が非課税になる
通常、金融商品の運用によって得た利益(運用益)には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでの運用益には税金がかかりません。
3、退職所得控除または公的年金等控除がある
iDeCoを一時金として受け取る際は退職金として扱われる為、退職所得控除の対象となります。
また年金として受け取る際は公的年金等控除の対象となります。
iDeCoのデメリットは、
1、途中で換金ができない
預金やNISAの様に途中で換金する事はできません。原則として60歳までは換金できず、また途中解約する事もできません。
2、手数料がかかる
加入時、運用期間中、受取時にそれぞれ手数料がかかる事です。
加入時の手数料は金融機関によらず2,829円で一律です。運用期間中にかかる費用は毎月171円~611円と金融機関ごとに異なっています。受取時にかかる手数料は金融機関によらず440円で一律です。
iDeCoで定期預金を選んだ場合
さて、本日の本題はここからです。
果たしてiDeCoで定期預金を選ぶメリットはあるのでしょうか?
1、税制面のメリットは?
これは別に定期預金でなく、投資信託を選んだ場合も同じです。従って定期預金を選択するメリットにはなりません。
2、金利は?
ご存じの通り、現在のこの低金利時代です。いかにiDeCoであろうとも、定期預金の金利は0.001%~0.002%程度しかありません。
3、手数料を差し引くと
先にも述べた通り、iDeCoには手数料がかかります。特に運用期間中にかかる手数料は大きく、毎月171円~611円がかかるので、わずかな金利から手数料を差し引くと元本割れになってしまいます。
モデルケースで試算してみます
拠出金は月額2.3万円、加入期間は30年、定期預金金利は0.002%、手数料は最安の171円/月とします。(加入時、受取時の手数料は今回は考えない事にします)
元本は 2.3万円 × 12か月 × 30年 = 828万円
定期預金で運用した結果は 828.24万円
一方、運用期間中に差し引かれる手数料は 171円 × 12か月 × 30年 = 6,1560円 = 6.156万円
従ってiDeCoで30年運用後に受け取れる額は 828.24万円 - 6.156万円 = 822.084万円 となります。
残念な事に元本828万円を大きく下回ってしまいます。
ちなみに普通に銀行で定期預金をした場合は利息0.24万円に20%の税金がかかる為、
受取れる金額は 828.24万円 - 0.24万円×20% = 828.192万円 となります。
最後に
さて、いかがでしたでしょうか。iDeCoで定期預金を選んだ場合、残念ながら元本を大きく下回ってしまい、運用益が非課税になるというiDeCoのメリットは全く活かせない事がわかりました。できれば税制メリットをフル活用できる金融商品を検討したいものです。資産運用の手段はiDeCoだけではないので、例えば毎月1.3万円はiDeCoで投資信託を買い、毎月1万円は銀行で積立貯金をするなど、それぞれの制度や金融商品の特徴を活かして、資産全体で考えるの事をお勧めします。
誰でもFP相談室 村上