在職定時改定の導入 在職老齢年金受給者に朗報?年金額が毎年増額になる
目次
老齢厚生年金額の改定
昨年(令和2年)5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、6月5日に公布されました。この法律は、高齢者が長い期間にわたり色々なな形態で働くようになることが見込まれる中、社会経済の変化を年金制度に反映する事によって、より長期化する高齢者の生活基盤の安定を図るための制度を言われています。
今回の改正点は以下の4点です。
①被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大
②在職中の年金受給の在り方の見直し(在職定時改定)
③受給開始時期の選択肢の拡大
④確定拠出年金の加入可能要件の見直し
そこで今回は②の在職定時改定の導入について解説したいと思います。
その他の改正点については今後、機会がありましたら解説したいと思います。
在職定時改定とは
今回の改正で来年(令和4年)4月以降、「在職定時改定」が新たに導入されることになりました。現行の制度では65歳以降、老齢厚生年金を受給開始しても再雇用等で働いた場合、退職時または70歳到達時(資格喪失日)以外に老齢厚生年金額が変更になることはありませんでした。
今回導入される「在職定時改定」は、この問題を解決するため、65歳以降に働いている場合も毎年1回(10月分から)、直近1年間に納めた年金保険料の実績に応じて老齢厚生年金額に反映される事になりました。このことは65歳以降の就労意欲の向上に寄与するものと期待されています。
1年働くことでどのくらい年金額が増える?
では65歳以降も働いた場合、年金がどれくらい増やす事ができるのか計算してみましょう。(再雇用で働いた場合の老齢厚生年金の詳細は下記コラムを参照下さい)
老齢厚生年金の計算はは以下の式を用いて算出します。
平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
では、モデルケース(Aさん65歳の場合)で試算してみましょう。
・厚生年金加入は480カ月(25歳~65歳)
・再雇用後の給与は月額24万円(通勤費等込み)で賞与は無しとします。
老齢厚生年金額は上記式から
24万円×5.481/1000 ×12カ月=1.58万円 と算出する事ができます。
同様に計算すると、給与月額が10万円なら年0.7万円、30万円なら年2万円、40万円なら年2.6万円程度増える事になります。
在職老齢年金による支給停止に注意
注意が必要なのは年金月額と総報酬月額の合計が47万円に近い方です。つまり65歳以降の老齢厚生年金の受給者が、再雇用等で働きながら在職老齢年金を受給している場合、受給年金と給与の合計が47万円を超える場合、超過額の1/2に相当する老齢厚生年金の支給が停止されます。せっかく「在職定時改定」によって老齢厚生年金の額が増えても、支給停止になってしまっては本末転倒ですよね。支給停止にならない範囲で働く事にも注意したいものです。
在職老齢年金の支給停止に関する詳細は下記コラムを参照下さい。
まとめ
今回は「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」の一部、在職定時改定の導入について解説させていただきました。例外はあるものの、多くの方の場合は働いた分の成果がより早期に年金額に反映される事になり、就労意欲の向上につながるものと期待されています。従来は65歳まで働く事が推奨されていましたが、今や70歳まで働く事があたりまえになる時代になりつつあります。在職老齢年金の制度を良く把握し、やがて必ず来る「働くことができなくなった」時にゆとり多き暮らしができるように備えておきたいものです。
その他の改正点については今後、機会がありましたら解説したいと思います。
誰でもFP相談室 村上